いにんけいやく【委任契約】
法律行為を行なうことを委託する契約のこと。民法第643条から第655条に規定されている。
この委任契約における法律行為とは、具体的には、取引の媒介(問屋営業など)、支払委託(送金など)等を指しているが、実際上はそれらの行為は、それぞれの特別法(商法・手形法など)で具体的に規律されているので、民法の委任契約の規定は、現在ではそれらの特別法を補充する役割しか持たない。
いやくきん【違約金】
不動産の売買契約では、当事者の一方が債務を履行しない場合には、債務の履行を確保するために、その債務を履行しない当事者が他方の当事者に対して、一定額の金銭を支払わなければならないと定めることがある。 このような金銭を「違約金」と呼んでいる。
けいやく【契約】
対立する2個以上の意思表示の合致によって成立する法律行為のこと。
具体的には、売買契約、賃貸借契約、請負契約などのように、一方が申し込み、他方が承諾するという関係にある法律行為である。
しゃくちけん【借地権】
借地権とは次の2つの権利のどちらかのことである(借地借家法第2条)。
1)建物を所有する目的で設定された地上権
2)建物を所有する目的で設定された土地賃借権
従って、資材置場にする目的で設定された土地賃借権は「借地権」ではない。
青空駐車場とする目的で設定された土地賃借権も「借地権」ではないことになる。
せんゆうけん【占有権】
占有権とは、物を支配する権利のことである(民法第180条)。
土地の所有者は、その土地を所持しているので、占有権を有している。
また土地の賃借人は、その土地を使用する権限があるので、やはり占有権を有している。
そうすると占有権という権利を考えなくても、所有権や土地賃借権だけに着目すればよいようにも考えられるが、あえて占有権という権利を想定するにはそれなりの理由がある。
ぞうよ【贈与】
当事者の一方がある財産権を相手方に無償で移転する意思を表示し、相手方がそれを受諾する意思を表示し、双方の意思が合致することによって成立する契約のこと(民法第549条)。
贈与は諾成契約とされている。つまり当事者の双方が意思を表示し、意思が合致するだけで成立する(財産が引渡されたときに成立するのではない)。また贈与は不要式契約なので、書面による必要はなく口頭でも成立する。
本来、贈与は好意・謝意などの動機で行なわれるものであるから、契約ではないとする考え方もあるが、わが国の民法では、贈与も契約であると構成した上で、「書面による贈与」と「書面によらない贈与」に区分し、異なった取扱いをするという方法を採用している。
だいりけいやく【代理契約】
宅地建物取引業者が、売買取引・交換取引・賃貸借取引について、売主の代理人や買主の代理人となって(又は貸主の代理人や、借主の代理人となって)、取引成立に向けて活動するという意味である。
宅地建物取引業者がこうした活動を行なう際に、依頼者(売主・買主・貸主・借主)と宅地建物取引業者との間に締結される契約を「代理契約」と呼ぶ。
代理契約の方法や内容については、宅地建物取引業法第34条の2(および第34条の3)によって厳しい規制が加えられている。
代理契約に関する規制は、媒介契約に関する規制と同一であるが、報酬額の最高限度が異なっている。
たんぽせきにん【担保責任】
特定物の売買契約において、特定物に何らかの問題があったときに、売り主が負うべき責任を「担保責任」という(民法第561条、第563条、第565条、第566条、第567条、第570条)。
特定物とは、取引当事者がその物の個性に着目して取引するような物のことであり、具体的には美術品、中古車、不動産(土地・新築建物・中古建物)などを指す。
こうした特定物の売買では、買い主はその物の個性(長所・欠点の両方を含む)に着目して購入を決定するのであるから、仮にその物になんらかの欠点があったとしても、買い主はその欠点があることを理由に、売り主の責任を問うことはできないはずである。
しかしこれでは買い主の保護に欠けるし、売買取引の信頼性も損なわれる。 そこで法律(民法)では、担保責任の規定を設け、一定の場合には特定物の売り主に責任を負わせることとしたのである。こうした売り主の責任が「担保責任」である。
ちじょうけん【地上権】
建物や工作物を所有する目的で他人の土地を使用する権利のこと(民法第265条)。
土地賃借権と地上権は非常によく似ているが、次のような違いがある。
1)土地賃借権は債権だが、地上権は物権である
2)地上権は、土地所有者の承諾がなくても、他人に譲渡することができる。
3)地上権を設定した土地所有者には登記義務があるので、地上権は土地登記簿に登記されているのが一般的である。
借地権とは次の2つの権利のどちらかのことである(借地借家法第2条)。
1)建物を所有する目的で設定された地上権
2)建物を所有する目的で設定された土地賃借権
従って、資材置場にする目的で設定された土地賃借権は「借地権」ではない。
また、青空駐車場とする目的で設定された土地賃借権も「借地権」ではないことになる。
しゃくちけんのしょとくじこう【賃借権の取得時効】
取得時効とは、物を一定期間占有したとき、その物の権利を取得することができるという時効の制度であるが、わが国の民法では、所有権の取得時効を定める(民法第162条)だけでなく、地上権・地役権などの所有権以外の財産権の取得時効も定めている(民法第163条)。
このため、地上権・地役権などの物権(用益物権)については当然に取得時効が成立するのである。
賃借権という債権についても取得時効が成立するかについては、取得時効は「物」を支配するという事実状態を尊重する制度であり、債権は取得時効の対象にはなりえないと考えることもできるが、判例では、不動産賃借権は地上権と同様に不動産を占有する権利であるので、民法第163条の財産権に含まれ、取得時効が成立するものとしている。
このような賃借権の取得時効については、取得時効を主張する者が「自己のためにする意思」をもち、「権利を行使する」ことが必要である。
ていとうけん【抵当権】
債権を保全するために、債務者(または物上保証人)が、その所有する不動産に設定する担保権のこと。
債務者(または物上保証人)がその不動産の使用収益を継続できる点が不動産質と異なっている。
債権が弁済されない場合には、債権者は抵当権に基づいて、担保である不動産を競売に付して、その競売の代金を自己の債権の弁済にあてることができる。
てつけ【手付】
売買契約・請負契約・賃貸借契約などの有償契約において、契約締結の際に、当事者の一方から他方に対して交付する金銭などの有償物のこと(民法第557条・第559条)。
手付には交付される目的により、解約手付、証約手付、違約手付の3種類がある。民法では手付とは原則的に解約手付であるとしている。
また一般に取引において交付される手付の大半は解約手付であると考えてよい。
宅地建物取引業法では、消費者保護の観点から、売り主が宅地建物取引業者である場合にはその売買契約で交付される手付は解約手付とみなすという強行規定を設けている(宅地建物取引業法第39条第2項)。これを解約手付性の付与という。
なお、契約にしたがって当事者が義務を履行したとき、手付は代金の一部に充当される。
とちちんしゃくけん【土地賃借権】
土地賃貸借契約にもとづいて、土地を賃借する権利のこと。
土地賃借権と地上権はよく似ているが、次のような違いがある。
1)土地賃借権は債権だが、地上権は物権である
2)土地賃借権は、土地所有者の承諾を得なければ他人に譲渡することができない。
3)土地賃借権は、ほとんどの場合、土地登記簿に登記されない。
ばいばいけいやく【売買契約】
当事者の一方がある財産権を相手方に移転する意思を表示し、相手方がその代金を支払う意思を表示し、双方の意思が合致することで成立する契約のこと(民法第555条)。
売買契約は諾成契約とされている。つまり当事者の双方が意思を表示し、意思が合致するだけで成立する(財産が引渡されたときに成立するのではない)。
また売買契約は不要式契約なので、書面による必要はなく口頭でも成立する。
また売買契約は財産権を移転する契約であるが、その対価として交付されるのは金銭でなければならない(金銭以外の物を対価として交付すると「交換契約」となってしまう)。
ふかんぜんりこう【不完全履行】
債務不履行のひとつ。債務の履行がなされたが、債務者の故意または過失により、その履行が完全なものでないことをいう。
ほうじん【法人】
法律により権利・義務の主体となることを認められた団体のこと。社団法人、財団法人、株式会社、学校法人、宗教法人などである。また名称が「組合」であっても、法人である場合がある(協同組合など)。
法人を設立するには法律の規定が存在することが必要であり、法律に定める要件を満たさない場合にはその団体は法人となることができない。
ほうじんかく【法人格】
法人の権利能力のことを法人格という。法人は権利能力を有している(換言すれば法人格を有している)ので、権利義務の主体となることができる。
例えば、法人が法人名義で財産を取得したり、財産を法人名義で登記したり、契約を法人として締結することが可能である。
ほしょうさいむ【保証債務】
主たる債務者の債務を、別の者が保証したとき、この保証人の債務を「保証債務」という。
例えばAがBから借金をし、Aの友人であるCがその借金の保証人になったとしよう。このときAは主債務者、Bは債権者、Cは保証人、AB間の債務は「主債務(しゅさいむ)」、BC間の債務は「保証債務」と呼ばれる。 保証債務とは、正確には「主債務者Aが債務を履行しない場合に、保証人CがAの代わりに債務を履行するという保証人Cの債務」である(民法446条)。従って保証人Cは、主債務者Aが借金を返済しない場合にのみ借金返済の義務を負うことになる。
つまり債務履行の責任はまず主債務者にあり、保証人は補充的に債務を履行するだけである。このような保証債務の性質を「補充性」と呼んでいる(ただし連帯保証には補充性がない)。
れんたいほしょう【連帯保証】
債務不履行のひとつ。債務の履行がなされたが、債務者の故意または過失により、その履行が完全なものでないことをいう。
債務者の債務を、他人が保証することを「保証」という(民法第446条)。この「保証」の特殊な形態として、保証人の責任を強化した「連帯保証」がある(民法第454条)。
融資取引や不動産取引において単に「保証」という場合には、実際には「連帯保証」であることが非常に多いので、保証契約を締結する際には狭い意味での「保証」なのか、それとも「連帯保証」であるのかを慎重に確認しなければならない。
1)催告の抗弁権と検索の抗弁権について 主たる債務者の債務を、他人が保証することを「保証」という(民法第446条)。以下ではこの民法第446条の保証を「普通保証」と呼ぶことにする。
普通保証では、保証人が債権者から保証を履行する(肩代りする)ように求められた時には、まず先に主たる債務者に請求し、主たる債務者の財産を調べるべきであることを保証人は債権者に主張することができる。
このような保証人の主張権を「催告の抗弁権」と「検索の抗弁権」と呼んでいる(民法第452条・第453条)。
これに対して保証人の責任を強化した「連帯保証」では、連帯保証人は「催告の抗弁権」と「検索の抗弁権」を持たない。
従って、主たる債務者が債務の弁済を怠った場合には、債権者は、連帯保証人の催告の抗弁と検索の抗弁を受けることなく、ただちに連帯保証人に肩代りを請求できる。この点で連帯保証のほうが普通保証よりも債権者にとって有利である。
2)主たる債務の消滅等の主張について
普通保証では、保証人が債権者から保証を履行する(肩代りする)ように求められた時には、主たる債務者の債務がすでに完済されているなどの事実があるときは、保証人はその事実を債権者に主張することができる。
具体的には、主たる債務者が既に債務を弁済していること、主たる債務者の債務の返済期限がまだ到来していないこと、主たる債務者の債務が時効にかかって消滅していること、債権者と主たる債務者との間に相互に相殺できる債権があること、債権者が主たる債務者に対して債務を免除していること、などを保証人は主張することができる。
このような保証人の主張権は、保証があくまで主たる債務を肩代りするものであるという保証の本質から考えて当然のことである(これを「保証債務の附従性」と呼ぶ)。
連帯保証でも普通保証と全く同様に、主たる債務の消滅等の主張を連帯保証人は債権者に対してすることができる。
3)請求の絶対効について
連帯保証に特有の性質として、債権者からの請求が絶対効を持つことが挙げられる(民法第458条・第434条)。これは債権者が連帯保証人に履行を請求すれば、主たる債務者に履行を請求したことになるという趣旨であり、主たる債務の時効中断において意味がある。
ただし注意したいのは、よく似たような事例として、連帯保証人が債権者に対して「債務の承認」をした場合には、こうした絶対効は生じないという点である。つまり連帯保証人が債務承認をしたとしても、主たる債務者が債務承認をしたことにはならないのである(大審院判決昭和12年11月27日など)。
4)保証人が複数いる場合について
普通保証の場合、保証人が複数いれば、その保証人相互には意思の連絡がなくても、法律上当然に、「共同保証」になるとされている(民法第456条・第427条)。
この共同保証とは、保証人が主たる債務を人数分で平等に分割してそれぞれ肩代りするという意味である。
例えば、主たる債務が100万円、普通保証による保証人が4人いれば、1人の保証人の肩代りする金銭は25万円に限定される。このように普通保証における保証人の責任が頭割りになることを「分別の利益」という。
ところが、連帯保証の場合には「分別の利益」がないものとされている(民法第458条)。
従って、例えば主たる債務が100万円、連帯保証による保証人が4人いれば、1人の保証人の肩代りする金銭は100万円になる。つまり債権者は連帯保証による保証人の誰に対してでも、主たる債務の全額の肩代りを要求できるという趣旨である。
このような面からも連帯保証は債権者にとって非常に有利である。